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ヂヤンテイシステムサービスの小澤です。
先週の日経新聞にやたらと
興味をそそる連載記事がありました。
連載記事のタイトルは「キセキの高校」。
偏差値40の東京都立大山高校(板橋区)が、
「哲学対話」を通して、
有名私大や公立大への進学者が
相次ぐようになったという話。
話の中心は、進学のことではなく、
「哲学対話」について。
5回にわたる連載記事ながら、
興味深く、一気に読んでしまいました。
【「キセキの高校」連載記事】
日経新聞の朝刊に掲載された内容と、
電子版の内容がありますが、
電子版の方が内容が濃いので、
お勧めです。
そもそも、キセキを起こした
「哲学対話」とは何か?
カント、ヘーゲル、サルトル、
難しい哲学の話をするものではない。
生徒10~20人が車座になって、
1つのテーマを決めて質問し、答え合う、
約90分の集い。
肯定側・否定側に分かれて討議する
ディベートでもない。
「哲学対話」には、ユニークなルールがある。
1.何を言ってもいい
2.人を否定したり茶化したりしない
3.発言せず、ただ聞いているだけでもいい
4.お互いに問いかけることが大切
5.知識ではなく、自分の経験に即して話す
6.話がまとまらなくても、意見が変わってもいい
7.分からなくなってもいい
テーマはあるが、何を言ってもいい。
否定したり茶化すような発言をしては
いけないので、
空気を読んで言いたいことを我慢
するような気づかいは要らない。
否定的なことを言わないことは、
他者の尊重につながる。
結論をだす必要がないどころか、
だしてはいけないと指導される
ようです。
何故、校則ってあるの?
そもそも、先生って必要なの?
など、頭に浮かんだ「なぜ?」を
大切にして、深掘りしていく
ことが重要なこと。
自由に安心して話ができる場に
なることから、
私は、こんなことを考えていたのか。
と自らの内面に気づくことも。
さらには、周囲に対する目も
変ってくるようです。
授業の邪魔ばかりしている生徒も、哲学対話になると自分の人生経験を基にしっかりした考えを述べる。「あの子にはあの子の事情があるんだな」。普段はみえない同級生の心の内に、それぞれの経験や思考の核があるのだとわかってきた。
「哲学対話」で生徒の何が変わるのか、
それは、生徒が「言葉を得る」ことだと
言います。
「死ねばいいのに」とインターネット上の”炎上”めいた書き込みのような反応しかできなかった生徒が、「死ぬのはどういうことか」「どんな風に死ぬのがいいのか」といった問いを発するようになった。「それまでの自分に代わる言葉を生徒は獲得していった」
「哲学対話」は、70年代に
アメリカで始まった
「子どものための哲学」に由来するそう。
日本における「哲学対話」の提唱者は、
東大の梶谷真司教授。
大山高校の校長が人を介して、
梶谷真司教授に出会ったのが、
「哲学対話」を始めたきっかけに。
この辺の経緯も詳しく紹介されていて、
とても興味深いので、
是非、記事を読んでみてください。
「哲学対話」では、テレビや本から
知った話ではなく、
自分の経験から話をしなければならず、
ファシリティターから、
「なぜ?」「どうして?」と問いを
向けられることで、考え、「言葉を得る」。
「哲学対話」で語り合うことから
解放感が生まれると言います。
自由だと感じること、それが体を軽くする。考えることが、人を自由にし、背負った荷を軽くする。
特に日本人なのかもしれませんが、
子どもだけでなく、大人も、
人の目や、周囲の空気を気にして、
自由に考えを語ることができない。
「私たちが自由にものを言える場というのは、実はほとんどないと言っていい。学校でも会社でも、家の中ですら、言ってはいけないこと、言うべきことのルールが決まっていて、みんなそれに従って話している」
語ることができないことによって、
考えること自体を拒否してしまっている
ところがあると思います。
だからこそ、この「哲学対話」に
興味を持ちました。
考えることは、偏差値には関係がない。
大山高校の進学率が上がったのは、
「哲学対話」の結果であり、
「哲学対話」を導入した理由は、
生徒たちの言葉と思考を解放すること。
学校の本来の目的は、
子どもを自律させること
であると挑戦を続ける、
麹町中学校と基本的に同じだと思います。
「哲学対話」で問われることは、
ネットで検索してもでていない。
そもそも、自分の経験から、
自分の言葉でしか語ってはいけない。
何でも簡単にネットで調べることができ、
SNSで他人の意見に触れることが
できる時代に、
この「哲学対話」は、とても重要
であると思いました。
連載を最後まで読むと、企業でも
取り入れているところがある。
しかも、
従来の手法に限界を感じた
マーケティング部門が注目している
との内容が紹介されています。
イノベーションも、こういう思考力が
ないと生まれません。
かつてホンダは、「ワイガヤ」と呼ばれる
対話を泊まり込みでやっていたそう。
「なぜこの製品をつくるのか」
「我々は何を求めているのか」
根本的な問いを徹底して重ねていた。
「そもそも、なぜ働くのか?」
「どうして生きているのか?」
仕事をする前提に、こういう問いが
必要な時代がやってきていると
感じています。
「哲学対話」で根源的なことを常に
考える習慣がある人が、
未来の社会を担っていくのではないのか。
そう思えたからこそ、
今回は「哲学対話」を紹介させて
もらいました。
あなたの会社でも取り入れてみませんか?