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印刷通販サイトの出現によって、「コート」や「マットコート」などの印刷用紙の名称に触れる機会が、一般の方でも増えてきました。
そうすると、一般の方は印刷用紙の厚さをどう判断して印刷通販を利用しているのだろうか?そんな疑問が頭をよぎり、何か基準というか目安になるものがあると良いのではないかと思いました。
印刷通販サイトには、紙の厚さについて「おまかせ」なんてメニューもあったりしますが、ポスティングやDMをマーケティングに活用する企業にとっては、配布するチラシやDMの紙の厚さも重要な分析対象になるのではないでしょうか。
そこで、誰でも目に触れ、手で触れるものを目安にしてみるとこんな感じです。
コート紙の厚さの目安 | |
---|---|
コート73kg | 新聞紙の厚さくらい |
コート90kg | コピー用紙の厚さくらい |
コート110kg | 一万円札の厚さくらい |
コート135kg | 週刊誌の表紙の厚さくらい |
これはあくまでもコート紙という、新聞折込やポスティングチラシ等でよく使われる、表面がツルツルした印刷用紙の場合です。
上質紙では70kgの紙でもコピー用紙より厚くなります。さらにもう1種類よく使用される印刷用紙にマットコートというものがありますが、90kgや110kgなどたとえ数字が同じだとしても、マットコートもコートに比べると厚いことが分かります。
この「kg」とは何を指しているのかといえば、一定の寸法の印刷用紙を1,000枚重ねた時の重さを指します。どんなに薄い紙でも1,000枚も重ねれば、73kgとか90kgとかになってしまうということです。
そのため、数字が大きくなれば、1枚の紙の厚さも厚いということで、数字を見て紙の厚さを判断できるということになります。180kgともなれば、官製はがきで使うような紙になります。
また、90kgとか110kgなどの同じ単位の紙でも、上質紙やマットコートなどで、紙の種類が違えば紙の密度が違います。密度が低い紙の方が体積は大きくなりますので厚さがあるということになります。
ちなみに、一定の寸法の印刷用紙1,000枚のことを「1連(れん)」といいます。この1連の用紙の重さのことを「連量」といい、連量が紙の厚さを表す単位になっていることになります。
オフィスにあるA4サイズのコピー用紙。1梱包は500枚。2梱包で1,000枚。そのくらいなら持つことはできますよね。紙が束になると重いといっても、90kgもの重さはありません。ということは、「一定の寸法」はもっと大きなサイズであることが分かります。
実は788mm×1091mmの紙を基準にしています。長辺が1メートル以上もある紙なので結構大きな紙です。模造紙のような大きな紙と言うと分かりやすいかもしれません。
そんな大きな紙が1,000枚積み上がると73kgとか90kgになることになります。この寸法の紙のことを我々は四六(シロク)判(788mm×1091mm)と呼んでいます。
その四六判の紙を1,000枚重ねた重さが90kgであるのか110kgであるのかで、四六判の紙一枚の厚さも表現しているということになります。
そのため、最初に紹介させていただいた表の中の紙を正確に表現すると、四六判90kgであり、四六判110kgとなり、全て四六判という紙を基準にした表現だということになります。
A4やA3など、「A」がつく紙の基本は、A0(エーゼロ)判と呼ばれる841mm×1189mmのサイズの紙です。これまた大きな紙ですね。
A0(エーゼロ)判を長辺で半分にすると、A1(エーイチ)サイズ、
それをまた長辺で半分にするとA2(エーニ)サイズ、
さらに半分にするとA3→A4というサイズになります。
●A列の紙サイズ
B5やB4など、「B」がつく紙の基本は、B0(ビーゼロ)判と呼ばれる1030mm×1456mmのサイズの紙です。更に大きな紙です。
基本となる紙が「A」よりも「B」の方が大きいため、
A4とB4のコピー用紙を比べてみればB4の方が大きいことも納得できると思います。
●B列の紙サイズ
A判は世界各国で使われている規格ですが、B判は日本独自の規格です。
外国にはB5とかB4サイズなどの規格はないということになります。
また、よく耳にする「A」がつく紙、「B」がつく紙とは別に、先ほどの「四六判」という紙があり、菊判(636mm×939mm)という種類の紙もあります。
大きさ順に並べるとこうなります。
B0(ビーゼロ)判 | 1030mm×1456mm |
---|---|
A0(エーゼロ)判 | 841mm×1189mm |
四六(シロク)判 | 788mm×1091mm |
菊(キク)判 | 636mm×939mm |
「A」がつく紙、「B」がつく紙をそれぞれ長辺で半分にした「A1」と「B1」サイズにして紙の大きさ順に並べ直してみるとこうなります。
四六(シロク)判 | 788mm×1091mm |
---|---|
B1(ビーイチ)判 | 728mm×1030mm |
菊(キク)判 | 636mm×939mm |
A1(エーイチ)判 | 594mm×841mm |
四六判とB1サイズが近づいてきました。よく見ると菊判とA1サイズも近寄ってきたことが分かります。
実は、B5の冊子や、B4のチラシを印刷する時は四六判の印刷用紙を、A4のパンフレットや、A2のポスターを印刷する時は、菊判の印刷用紙を使用しています。
ということは基本的に、仕上がりのサイズがB列のものは四六判。仕上がりのサイズがA列のものは菊判と、印刷用紙を使い分けているということです。
印刷機にかけるときは、仕上がりの絵柄の周りに「トンボ」や「塗り足し」が必要となるため、仮にA4サイズの印刷物を作る時も、A4サイズよりも大きな紙を使用することになります。
「トンボ」や「塗り足し」については、コチラを参照。
▲『Illustrator版 完全データへの道 vol.1 トンボ・塗り足し』
そのための紙が、四六判や菊判という紙であり、普段目にするA4やB5などのA列・B列の紙とは別の規格の紙を使っています。日本ではJIS(日本工業規格)により紙のサイズが定められています。
「A」がつく紙=A列、「B」がつく紙=B列は、
「紙加工の仕上がり寸法」(JIS P0138)であり、
四六判と菊判は、紙加工をするための
「原紙寸法」(JIS P0202) ということになります。
ここで復習ですが、四六判などの原紙1,000枚のことを1連と呼び、その1連の紙の重量である連量の単位をkgで表示し、紙の厚さを知るための目安にしています。
そして、B5やB4などのB列仕上がりの印刷物は四六判の印刷用紙、A4やA3などのA列仕上がりの印刷物は菊判の印刷用紙を基本的に使うと説明いたしました。
寸法を比較させていただいたように、原紙としての四六判と菊判では四六判の方が大きなサイズです。そのため、四六判1,000枚=1連が110kgであれば、菊判はもっと軽いはずなので、連量の数字が小さくなり76.5kgです。四六判110kgの紙は、菊判に換算すると76.5kgの紙ということになります。
我々は、仕上がりがA4やA3サイズの印刷の場合、110kgと言われたら菊判76.5kg、135kgと言われたら菊判93.5kgの紙を実際は使用しています。以下が、四六判と菊判の関係です。
●コート紙の場合の斤量換算
四六(シロク)判 | 菊判 |
---|---|
73kg | → 50.5kg |
90kg | → 62.5kg |
110kg | → 76.5kg |
135kg | → 93.5kg |
大は小を兼ねるため、全て四六判の紙を使っても印刷はできるのですが、仕上がりがA列の印刷物は菊判の印刷用紙を使った方が、無駄になる紙が少なく、用紙代も安くできるため使い分けます。
印刷通販サイトでは、A4のチラシ印刷でも90kgや110kgと本来ならB列仕上がりの印刷物に使う四六判の連量が記載されています。紙の厚さは同じなので、実際は菊判62.5kgや76.5kgを使うにしても、90kgや110kgと書いた方が分りやすい為です。基準として四六判の連量を使っているということになります。
四六判コート110Kgの厚さの紙だとこれだけの種類があります。
四六判 | B判 | 菊判 | A判 |
---|---|---|---|
110kg | → 106kg | → 76.5kg | → 70.5kg |
これは全て同じ紙の厚さであり、仕上げる印刷物と、印刷と加工の都合によって最も効率が良い紙を選んで使うことになります。
同じ厚さの紙なのに、こんなに数字が違うと複雑です。
そのため、業界では「四六判ベース」で紙の厚さを表現する習慣があります。
A4仕上がりの印刷物で90kgの紙と言われても、見積をする時も、実際に印刷する時も、仕上がりはA4の印刷物なので、自ずと菊判76.5kgかA判70.5kgのどちらかを選択することになります。
ということで印刷通販などでは、印刷用紙の紙の厚さを「四六判ベース」で、または「四六判に統一」して表現することで、紙の厚さを分かりやすく表現していることになります。
印刷用紙の厚さのことを説明するためには、これだけは不十分です。しかし、一般企業で印刷物発注ご担当社の方であれば、この基本と目安を理解していれば充分だと思います。
簡単にまとめると、A4やB5などよく目にする仕上がりサイズの紙の規格とは別の印刷用紙の規格があること。それが1,000枚積み上がった重さが紙の厚さの単位として使われ、四六判という原紙の重さが代表で使われているということです。
1枚の紙は軽い。しかし紙は束になるとやたら重くなります。印刷の仕事は紙の束を扱う仕事であって、重い紙を移動させる仕事だとも言えるのです。
印刷業界は歴史が長く、知恵のかたまりとも言える諸先輩方の工夫の産物で成り立っています。印刷業界に入った者は紙の計算の勉強をすることで、そんな実務の知恵までも勉強ができます。
とても奥が深くおもしろいのが印刷の知識。また続きを書かせていただきます。