はじめまして。プリプレス部の山田です。
刷版(CTP版やフィルムなど印刷機に掛ける原稿)の出力を手掛けるDTPオペレーターをしています。
今回の記事のテーマはIllustratorを使用した完全データの作成です。
デザインだけではなく、印刷に適したデータ。つまり『完全データ』を作るお手伝いが出来ればと思ってこの記事を書きました。
なんと!ヂヤンテイブロクで初めてのシリーズ物です。
「トンボ」「塗り足し」「アウトライン」など、デザイナーにとっては『当たり前』の事項ばかりだと思います。
しかし『デザイナー目線』ではなく『オペレータ目線』の記事なので、もしかしたら知っているけど知らなかった。そんな内容もほんの少しはあるかもしれません。
デザイナーとオペレーター…作業者が違うだけでデータの作りを見る目線って意外に変わるものなんです。
初めての人は勉強として。知っている人は復習がてら読んでみて下さい。
印刷物を作成する時、出力サイズのデータの中心や角に配置する仕上りサイズを示すマークの事。
また、多色刷りの場合インキを重ねるための見当になります。
印刷物の天地左右を示す「センタートンボ」
仕上りサイズを示し断裁する時の印となる「角トンボ(コーナートンボ)」
製本時、紙の折り位置などを示す「折りトンボ」
トンボはこの3種類あり、センタートンボと角トンボは印刷時の見当になります。
更に角トンボは一般的に二重になっており、仕上りを示す内トンボと塗り足しを示す外トンボとがあります。
【トンボの作成方法】
CS3以降のバージョンなら
「トンボを付けたいオブジェクトを選択」→「フィルタ」→「クリエイト」→「トリムマーク」
CS4以降のバージョンなら
「トンボを付けたいオブジェクトを選択」→「効果」→「トリムマーク」
(編集の必要があるのなら「オブジェクト」→「分割・拡張」でパスを分割させましょう)
この時、気を付けてもらいたい事は、選択したオブジェクトに線が付いていると、その線幅を含めた寸法のトンボが作成されてしまうことです。
きっちり仕上りサイズで作成したいのならばトンボを付けるオブジェクトの線はなしの状態にしておきましょう。
印刷はプリンターと違い印刷サイズそのままの用紙を使う訳ではありません。
印刷サイズより一回り大きい用紙を使い、最後に正寸に断裁します。
A4サイズでデザインを作成した場合、A4サイズぴったりでデータを作成していると、断裁でブレが起きた時紙地が見えてしまう事があります。
せっかく綺麗にデザインしたのに、印刷物に紙地が見えていると台無しですよね。
そういったズレを起こさない為に、仕上りサイズから地色や画像をわざとはみ出させて塗り足しを作ります。
最終的に断裁で切り落としてしまう部分ですが、印刷物を綺麗に仕上げるには重要な処理なんです。
この処理の事を「塗り足し」「ドブ」、または断裁される領域なので「裁ち落とし」などと呼んだりします。
どんな用紙に刷るかによって変わってきますが基本的には3mm程度あれば十分。
ただ厚紙や段ボールなど、伸縮が大きいものはもう少し塗り足しが必要な場合もあるので、その都度確認が必要です。
作ったトンボのカラーを確認して下さい。何色になっていますか?
スウォッチを確認して「レジストレーション」になっていれば問題ありません。
レジストレーションは使用する全ての色を内包しているのでトンボに最適なカラーです。
CMYKの4色だけでなくスポットカラーにも対応してくれるので最初にこのカラーにしておけば色数が増えても安心ですよね。
トンボはレジストレーションの100%で作りましょう。(Illustratorのデフォルト設定です。)
ここで問題になるのは2色以上のカラーを使用しているのにトンボがスミ単色、または他の単色カラーになっている場合です。
印刷はプリンターのように、画面上で見えている状態のまま出力されるのではありません。
使用されている色が1版1版分解された状態で出力され、印刷機を通して一つの印刷物になるんです。
1色1色分解されて出力されるのでトンボがどれか1色にしか付いていないという事になれば印刷時に見当が合せられず、結果刷れなくなってしまいます。
トンボは全てのカラーに必ず付ける。これが鉄則です。
C、M、Y、Kと別々に作成し重ねている人もたまにいますが、あまりオススメできません。ふとした時に触ってしまい1色だけトンボがズレてしまう、CMYK全てが微妙にズレて重なっている、などエラーの元になってしまう危険性があるからです。
トンボはレジストレーションで作成し、その後はロックを掛けるか別レイヤーに分け、レイヤーにロックを掛けて動かないようにしましょう。
トンボの太さは何mm、または何ptになっていますか?
トンボは印刷時の見当を合わせるのに重要なアイテムです。
付いていないのは問題外ですが、付いていても太すぎると印刷時のズレが大きくなってしまいます。
かといって細すぎるのもダメ。細い程見当は合ってきますが、インクが乗らない程細い線だと結局付けた意味がない事に
トンボの太さは0.1mm(0.3mm)くらいを目安にすれば良いと思います。
しかしあくまでも目安です。塗り足しと同じようにどんな素材に印刷するか、それを確認しながら太さを調整しましょう。
※トンボはIllustratorのデフォルトで約0.1mm、塗り足し3mmに設定されています。
必要性がない限り触らなければそのままの状態で大丈夫です。
ただし、トンボごと拡大・縮小、カラー変更などを行った場合はその作業に合わせてトンボもサイズや色が変わってしまいます。
作業中は何が起こっているかわからないので確認を怠らないようにしましょう。
・トンボは付いているか。
・トンボの色はレジストレーション。又は必要なカラーが全て入っているか。
・トンボの太さは適切か。(目安0.1mm/0.3pt)
・塗り足しは付いているか。(目安3mm)
この4点をしっかり確認しましょう。
トンボも塗り足しも印刷する時にとても大切なものなのですが、意外に忘れていたり出来ていなかったりする事があります。
完全データという形で受け取っていたのに、「印刷するぞ〜」という時にミスに気が付きます。
修正出来るデータがあればその場で修正が可能ですが、そうでない場合はちゃんとしたデータを入稿し直してもらうしかありません。
作業自体は簡単なものなので基礎がしっかりとしたデータを作りましょう!
次は「仕上り罫の入れ方」です→