こんにちは。プレプレス部の山田です。
前回から時間ばかりが経ってしまいましたがやっと新たに更新する事ができました。
久しぶりの今回は前回の『透明効果part.1ぼかし』に続きpart.2になります。
皆さんは透明効果を使用している時はどのような保存方法で作成していますか?
もちろん、入稿を依頼する印刷所の定めた形式でデータを作成しているとは思いますが、透明効果の有無に関わらず毎回同じ方法で入校データを作成していないでしょうか。
今回は透明効果part.2という事で透明を使用しているデータに関わってくる『透明分割』について書いていきたいと思います。
透明分割とは読んで字のごとく透明を分割する機能です。
Ilustrator9から透明効果が追加され、Illustrator上でもPhotoshopの様な複雑な表現が可能になりました。
が、そもそも印刷に透明という考え方はありません。
なので透明効果を印刷しようと思ったら透明の部分を透明ではない状態に変化させる必要があります。
透明の見え方を保持したまま透明ではない状態に変化させる機能。それを透明分割と言います。
透明効果が使われている部分とそうでない部分が重なっている時、透明が重なっている部分は透明の見た目を保持した状態で分割されます。
乗算や透過などの透明効果の掛かったオブジェクトがあった場合、下図のように分割されます。
ドロップシャドウやぼかしなどパスで表現出来ないものはラスタライズを掛け、画像化してから分割されます。
透明分割が適応されたPDFはオブジェクトや画像の上に白やグレーの線が走る分割線が現れる事があります。
分割した際の画像やオブジェクトの境界になる切れ目が見えてきてしまう現象です。
基本的にはPDF上の見た目だけの問題で、印刷に影響のないものが多いのですが、稀に印刷にも影響が及ぶものも現れます。
❏印刷に影響する分割線と影響しない分割線の見分け方。
PDFを限界まで拡大してそれでもものさしツールで計測出来ないような細い線や、拡大や縮小する事によって消えてしまう線、拡大すると細い破線になっている線などは刷版に現れないので問題なく印刷する事が出来ます。
しかし、拡大する事で線が太くなり、ものさしツールで計れるくらいの線がくっきりと現れていたら実際にオブジェクトや画像が分断されてしまっているので印刷にその線が入り込んでしまいます。
このような分割線を防ぐにはいくつか方法があります。
・PDF/X-4で保存する
PDFを作成する時、その中にPDF/X-4という項目があります。
これは透明分割をせずにPDFを作成するので分割線が現れる事がありません。
ただし、いくら入校データをPDF/X−4で作成しても、印刷所がPDF/X-4を出力できる環境でなければ意味がありません。
PDF/X-4を作成出来る環境と、それを出力出来る環境が揃っているのであればPDF/X-4でデータを作成すれば問題ありません。
・EPSを保存する前にIllustratorの解像度を上げる
EPSを作成する方はEPSを保存する前にまずドキュメント設定(option+command+p)を確認しましょう。
ここで透明欄にあるプリセットが「高解像度」以外のものになっていたら「高解像度」に変更します。
そして、EPSを保存する時に再び透明欄の中にあるプリセットの部分を「高解像度」に。
この部分を高解像度に変更しておかないと、透明分割の精度が落ちて分割線が出やすい状態になります。
※EPS保存をする時、下の方に『警告』欄があります。
ここに『分割・統合を要するアートワークがドキュメントに含まれています。』と出てきたら、データ内に透明効果が含まれているという事になります。
(更に言えばデータに透明がふくまれていない場合、プリセットは選択できなくなっているので一目瞭然です。)
EPS保存をするまでにドキュメント設定を確認・変更していなければ、一度保存は中断しドキュメント設定でプリセットが高解像度になっているかどうか確認しましょう。
・Illustratorで透明分割を行う
保存時にプリセットを高解像度にしても、データによっては分割線が出てしまう事があります。
そんな時はIllustrator上で透明分割をしてしまいます。
まずはドキュメント設定を確認して、プリセットが「高解像度」になっている事を確認します。
その後、問題となる透明部分を選び(※リンク画像がある場合は埋め込んでおく)「オブジェクト」→「透明分割を分割・統合」を選び、ここでもプリセットを「高解像度」に変更し「OK」を押します。すると、選択した部分が分割・統合されます。
一度分割したデータは元に戻らないので、分割前のデータを必ず保管しておきましょう。
※分割を行うと、グループ機能と同じように選択した最前面のオブジェクトに合わせてデータが統合されます。オブジェクトの前後が入れ替わってしまわないように注意しましょう。
透明分割は画像を埋め込む事と、分割する事によってパスの量が増えるので、複雑なデータになってくると分割ができない・分割できても保存できないという事態になりかねません。
そんな時はいっそ問題となる部分を画像に書き出し、またはラスタライズしてしまうのも一つの手です。
どうにか保存できても、あまりにも重いデータだと印刷所に入稿する時にもネックになるので気を付けましょう。
さて、ここで前回『vol.7オーバープリント』で書いたスミノセを思い出してください。
K=100%の部分を自動的にオーバープリントを掛けノセにする機能があると書きましたが、透明分割の自動処理がされた時、一部ノセにならない部分が発生する時があります。
図で見ると下図の様な感じです。
右側のスミにはノセが掛かっているのに左側のスミにはノセが掛かっていません。
一つの連続したテキストなのになぜこのようになってしまうのか。
それはIllustratorで「ウィンドウ」→「分割・統合プレビュー」を確認すると原因がわかります。
濃い青の帯部分にぼかしが掛かっており、赤く表示されている部分のぼかしの影響を受けて透明分割される範囲になります。
透明分割されるとぼかしの部分はラスタライズされるので透明効果の影響を受けている部分はぼかしと一緒にラスタライズされてしまいます。
自動スミノセの機能はIllustratorのオブジェクトは認識しますが、画像に対しては認識しません。
赤く表示されている範囲の中に入っている文字は分割と同時に画像化されてしまうので、自動スミノセの処理を行った時ラスタライズされた部分はオブジェクトのK=100%と認識されず、スミが抜けた状態のまま残ってしまいます。
これを防ぐにはIllustrator上で予めK=100%にオーバープリントのチェックを付けておく必要があります。
先ほど分割線を出さないようにするための対処法としてPDF/X-4という保存形式を例に挙げましたが、従来のPDFとどう違うのか説明したいと思います。
印刷用に適したPDFとしてPDF/Xという規格があります。
今まではその中でもPDF/X-1aというバージョンを使用してきた(または現在もPDF/X-1aを推奨している)印刷会社が多いと思うのですが、PDF/X-1aは『透明効果を分割して出力する』という機能を持っているので、問題となっている分割線が発生する可能性があります。
ではPDDF/X-4はどうかというと、PDF/X-4は『透明効果を保持したまま印刷できる』という特色があります。
そもそも印刷に透明という考えはない。
そこから始まった透明分割とその注意ですが、このPDF/X-4というデータは透明を分割せずそのまま印刷します。
なので透明によるエラーを回避でき、なおかつ透明分割でデータが重くなるという事もありません。
しかしこのPDF/X-4。
PDF/X-4を出力できる環境がないと意味がありません。
PDF/X-4のデータを出力できる環境で従来のバージョンであるPDF/X-1aを出力するのは特に問題がないのですが、PDF/X-4のデータを出力できない環境なのにPDF/X-4を出力しようとするとエラーが起きる可能性があります。
PDF/X-4では透明を分割していないのですから、分割を要する環境で出力しようとするとおかしくなるのは当然ですね。
更に、PDF/X-4を書き出せるのはIllustratorCS3以降のバージョンになり、PDFのベースバージョンも1.6以上になります。
PDF/X-4は、PDF/X-4が書き出せる環境である事とそれを出力できる環境が揃って使えるものです。
透明を使用したデータに取っては安全かつ楽な保存形式ですが、双方の環境をしっかり確認しておかないと意味のないどころかエラーを引き起こす危険なものになってしまいます。
PDF/X-4でデータを入稿したい場合は印刷を依頼する印刷所の環境をしっかり確認しましょう。
透明分割によるエラーはEPS入稿をしている人からすれば確認する術がないので、今一つどんなエラーなのかわかり辛いと思います。
そんな時は試しにIllustrator上で透明分割をしてみてはどうでしょうか?
Illustratorでの分割とPDFでの分割に多少違いはありますが、オブジェクトや画像に透明が使用されている時どのように分割されているのかがわかります。
作られたデータが複雑なほど分割も複雑になってくるので、その分保存方法や書き出し方によって分割線が出やすい状態になります。
その場合どうしたら透明によるエラーを防げるのか……。
一度どのように分割されるのかが分かれば、気をつけるポイントもまた変わってくるのではないでしょうか。
新旧合わせて様々な出力・入稿方法があるとは思いますが、作成されているデータに適した方法で保存するように心掛けましょう。
そして、既に依頼する印刷所が決まっているという人は、その印刷所に適したデータを作成するようにしましょう。
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